自分から進んで他人の庭を掃け

同じミスをするな

 成熟化社会になってものが売れなくなり、顧客満足とか顧客感動という言葉をよく聞く。
でも、それを言う前に、社員一人ひとりが自分の回りの人に十分なサービスをしているかどうかを考える必要がある。身近な人にサービスできない人が、お客様の立場に立った開発やモノ作りができるはずがない。
富士重工業の川合勇さんは、そんな思いを「他人の庭を掃け」という言葉に託す。「工場の中で不良が発生したとき、それが直前の工程のミスでも知らぬ顔を決め込み『俺の責任じゃない』と言ってるようでは会社はよくならない。いくら能力のある人でも、一人では持っている能力の半分も出せないからである。少なくとも、直前の工程で問題が起こったら、飛んでいって助けてあげよう。それが『他人の庭を掃け』の意味である。
助け合えば問題の解決が早くなるし、似たような間違いを自分でも犯すことはなくなる」と語る。
 営業部門でも、メーカーは数字を確保するために無理に販売店に商品を押し込むことが多い。このような自分本位の経営では、販売店も「よし、売ってやろう」という意識は湧いてこない。末端のやる気を削いでは、そのツケは結局メーカーに返ってくる。

自分の時間を精一杯楽しむ人

 第一級の国際人だったソニーの盛田昭夫さんは、ヨーロッパからビジネスを終えて成田に着くと、すぐに札幌行きの国内線に乗り換えてスキー場に直行する。そこで、友人と陽気にスキーを楽しんで帰京する。
 自宅に戻って地下プールでひと泳ぎする。プールサイドに置いた電話に国際電話がかかる。テキパキと応対したのち、ようやくくつろぎの時間がくる。こんな一日も珍しいことではなかったとか。
 そんな盛田さんが、旧制中学時代に最も苦手だったのが英語であった。ほかに地理と歴史が弱かった。このため旧制高校の受験に失敗し、一年浪人している。後年、世界を我が家の庭のように飛び回った盛田さんの不得意学科が英語と地理と歴史というのが面白い。
盛田さんは非常に根アカの行動人で、ソニーの基礎が固まった55歳の頃にまずテニスを始め、60歳でスキー、65歳でウインドサーフィン、67歳でスキューバダイビングをはじめた。派手で陽気で若々しいという盛田スピリッツの発露である。
前向きに何にでも取り組む姿勢が、ソニーの今日をあらしめたのかもしれない。

 

順番が逆

 私たちは、よく原因と結果を取り違えて物事をさかさまに見がちである。
たとえば、夫なり妻が浮気をしたので家庭が目茶苦茶になったとか、子供が非行に走ったから我が家が崩壊したと思っている人が多いが、本当は家庭が目茶苦茶になっているから浮気が始まったり、子供が非行に走るのではないか。そのことに気がついていない人が多いと、ひろさちやさんは言う。
会社でも同じだ。人が多いから会社が儲からないとリストラを行いがちだが、本当は会社のトップが明確な方向性を示せないから会社が儲からなくなり、それで人が余ってくるわけです。悪いのはトップであって社員ではない。
このように原因と結果を取り違えていては、いくら現象に手を打っても問題は解決しない。
 先の例で、浮気をした相手を一方的に罵ったり、非行少年に説教したり、社員をリストラしても、本質的な問題は何も解決しない。自分自身に原因があるのだと悟って、自分の考え方や行いを改めることによって、初めて問題の解決に光明が見えてくる。
みなさんは、自分以外のところに原因を求めて、現実から逃げていませんか?